発売から40年経っても手に入るCPU Z80

目次

Zilog の Z80 は 1970 年代中頃に発売された CPU ですが、約 40 年経った現在でもほぼ当時の形で手に入ります。偶然見つけて記念にと購入しましたが、せっかくなので CP/M マシンを作ることにしました。

夏の暑さ真っ盛りの 8 月初めに大阪・日本橋(でんでんタウン)にあるシリコンハウスへ買い物に行ったら、Z80 互換で在庫限りというポップを付けた東芝製 TMPZ84C00という DIP-40 の大きな IC が売られていました。見つけた時は、Z80 互換と言っても型番が非常に似ているので秋月電子で販売しているZ80 ボードの CPU みたいな PIO やタイマーが内蔵されたものだろうと思いました。

しかしスマホでデータシートを探してみると、TMPZ84C00 は PIO のたぐいは一切ない教科書にあるような完全に CPU の部分のみでした。さらにピン配列まで Z80 と同じです。

TMPZ84C00 それでなんだか懐かしくなり、「在庫限り」にもつられて安かったので記念に 2 つ買って帰りました。

Z80 とは

一応 Z80 が何か説明すると、Z80は 8bit CPU の Intel 8080 を改良した Zilog の 8bit CPU です。ピン配列に i8080 との互換性はありませんでしたが、マシン語レベルでは i8080 の上位互換で、Z80 にはいくつかの便利な命令が追加されていました。また DRAM の使用を前提としたリフレッシュ機能が組み込まれていために、(当時の感覚で)大容量の RAM を搭載しやすくなっていました。

その後 Intel も i8080 を改良した i8085 を出しましたが、1970 年代後半から 16bit パソコンの IBM PC や NEC の PC-98 シリーズが普及する 80 年代中頃までパソコンの CPU といえば Z80 でした。

21 世紀の Z80

TMPZ84C00 の資料をググると、東芝製 TMPZ84C00 のセカンドソース(注1)である Zilog Z84C00 は現在でも普通に販売されていました(注2)。購入した TMPZ84C00 のクロック入力は最大 6MHz でしたが、Z84C00 には最大 20MHz のより高速なクロックに対応する製品もあることを見つけました。

Z84C00

また 1980 年代中頃に日立が Z80 アーキテクチャを拡張して乗算命令などの追加と MMU や UART などを内蔵した CPU HD64180を開発しました(注3)。これも製造されていませんが、ほぼ同じ(注4)ものを Zilog が Z180 シリーズとして現在も製造しています。

この Z180 シリーズには何種類か有りますが、最新のものは Z8S180 と低電圧対応の Z8L180 です。昨年Legacy8080というコンピュータが発売されましたが、その Legacy8080 に使われている CPU が Z8S180 です。

Z8S180

発売から 40 年も経とうというのに未だに販売されている Z80 は、もう生きた化石と言っても良いかもしれません。

CP/M マシンを作ろう

記念にと購入した TMPZ84C00 ですが、ただ見ているのではもったいないので、1980 年代前半の気分(注5)でCP/Mマシンを作ることにしました。さらに可能ならば、最近公開されたFUZIXを移植できたら面白いかな。

CP/M マシン製作にあたって一番の問題点は、CP/M 自体を手に入れられるかです。昔買ったディスクは捨ててしまったし、新規に CP/M を購入することもできなさそうです。しかし調べてみると現在では逆アセンブルした CP/M のソースコードがThe Unofficial CP/M Web site公開されています(注6)。

参照

  1. Z80はZilogがオリジナルなのに、現在はZ80のセカンドソーサーになっているというのはなんとも皮肉。さらにセカンドソーサーと言っても、オリジナルの方は既に製造中止とは。
  2. 国内でZ84C00を扱っているところは見つかりませんでしたが、米国の部品通販会社Mouserから購入可能です。
  3. 現在データシートはPDFファイルでダウンロードするのが当たり前ですが、30年位前はもちろん紙に印刷されてものでした。それを商売にならない学生にそれも無料で送ってくれたのは、バブルな世代だったからでしょうか。まだ当時の資料を持っていますが、その1つがHD64180のマニュアルです。HD64180-manual
  4. Z180はHD68180のセカンドソースみたいなものですが、内蔵IOのアドレスがオリジナルのHD68180とは異なっています。そのことを見落としていて、後にハマることとなる。
  5. もっとも自分が制作したのは1990年代中頃で、既にi486でFreeBSDを普通に使える時代でした。Linuxも割と普及しだした頃かな。
  6. 非公式と言いながらLineoというCP/Mの所有者から配布が許可されている不思議なサイト。Thank you, Tim Olmstead. Tim Olmstead Memorial Page